「柔道のある生活」に期待
新型コロナ感染拡大はいまだ収束の状況が見えず、様々な困難が生じているすべての皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、医療従事者をはじめ最前線でご尽力されている方々に、改めて深甚なる敬意と感謝を申し上げます。
多くの人が不安を抱き、普段の生活にも大きな影響が出ています。そしてその影響は県内外の大会・行事等の中止や延期、規模縮小を余儀なくされており、私自身、一柔道人として、選手の活躍する機会を奪われることや、意欲が低下されることは残念でなりません。
柔道は139年の長きにわたり、多くの先達者によって受け継がれてきた歴史がありますが、近年、全国的にも柔道人口は毎年減少の一途を辿っています。石川県においても例外なく減少傾向にあり、少子化はもとより、趣味や各種スポーツ参加の多様化、また最近では新型コロナウィルス蔓延等、柔道人口の減少に関して様々な要因が考えられます。
その中で柔道を取り巻く環境も大きく変化し、社会における柔道の立ち位置も多様化が求められています。柔道の活性化を図る上で、重要と思われるのは柔道人口の底辺拡大であり、その鍵を握るのは、少年柔道から高段者の愛好者まで、あまねく柔道に関わる人の、柔道の継続であると考えております。
「人づくり人間教育のさらなる充実」と「競技力向上」、この二点は切っても切り離せない大切な柱であり、これらはすべてリンクしている事であります。
少年柔道では、「柔道ってこんなに楽しいのだ」「たとえ強くならなくても、柔道は素晴らしい」といった柔道大好き人間が多く育つことが大きな目的で、柔道を続けてきて本当に良かったことを実感できる、文武に長けた視野の広い人間になる「魅力ある柔道」の育成を目指しております。
また学生柔道・一般柔道においては、勝敗の柔道から年齢に応じたかかわりを進め、同時に自身の技を身につける、形の大成を目指す等、長く柔道衣を着られる「生涯柔道」を推進し、これから柔道を志そうとする人にも、健康・体力維持など多様化した参加型柔道を取り入れ、柔道に関心を持ってもらい、「魅力ある柔道」・「柔道のある生活」を展開し、柔道人口拡大に繋げる事を目途としております。
柔道による経験を通じて育まれた優しい心と強い身体は大変貴重であり、将来、社会に貢献する人材の育成に繫がることを考えたとき、柔道創始者の嘉納治五郎師範の『精力善用』『自他共栄』が果たすべき精神と役割は大変大きく、その精神と理念に基づく柔道の本質とも言うべき考えを大切にしつつ、その教育的効果に対する周囲の期待は大きなものがあります。
石川県柔道連盟において取り組んでいる育成を軸に、『地道に確実に前進』してゆく所存です。関係各位におかれましては、更なるご支援ご協力を頂きますようお願い申し上げます。